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SUCCESS STORY

松田真次 サクセスストーリー

JAXA「はやぶさ」に採用された球状サスペンションを生んだ開発者・松田真次。Honda時代の自動化から郵便集配ボックス、そして宇宙へ。ゼロから仕様を考え形にする、唯一無二のものづくりの軌跡。

CHAPTER 01

Honda時代には、休み時間を使ってドアの開閉試験を自動化

松田氏の前身は、本田技研工業(Honda)。同社に入社して半年、技術部に入ったころ、自動車ドアの耐久試験を任された。ほかの社員が手でドアの開閉をするなか、松田氏が思いついたのはドア開閉の自動化。もちろん仕事中は作業をしなければならないから、自宅で構想し図面を描き、昼休みに会社の工作室で製作した。

松田氏は「小学校からずっと模型工作は得意。キットを買うわけではなく、全部自分で作る」というほどの工作好きだ。そして完成したロボットを“部下”と呼び、“彼”に仕事を任せた。ロボットはたちまち評判になり、その技術を見に全国の本田技術研究所から人が集まってくるほどだったという。

この功績が当時の副社長・入交昭一郎氏の目に留まり、新たに設立されたホンダ用品研究所(現・ホンダアクセス)に配属された。そこで二輪車用パーツなどの開発で活躍し、プロジェクトリーダーにまで上り詰めた。

CHAPTER 02

勉強が全然できなかった小学校時代

ホンダ時代の活躍とは裏腹に、小さいころはまったく勉強ができなかったという松田氏。「宿題という宿題は、まったく手を付けなかった。宿題をやらないと、先生から殴られる。普通は殴られたくなくて宿題をやるんだろうけど、殴られれば宿題をやらなくてすむという考え方だった」。そう子ども時代を振り返る。

「社会に出てから、自分の好きなことを勉強できるようになって、夢中になった。好きなことしかやってないんだよ」

好きこそものの上手なれとはよく言ったもの。これこそオンリーワンの開発を続けられる原動力なのだろう。ホンダから独立後も、松田氏は宅配専用バイクなどのオリジナル製品を続々と手掛けていく。

屋根付きデリバリー用バイクの開発事例
屋根付きのデリバリー用バイクを初めて開発したのは松田技術研究所。警察庁や運輸省(当時)と調整を行いながら実現させた。写真はドミノ・ピザ(左)、ピザ・カリフォルニア(右)
CHAPTER 03

たった3日で構想を完成。郵便局員に支持された集配ボックス

郵便集配用キャリーボックス
郵政省(当時)に採用された郵便集配用キャリーボックス。ボックス下部に上下スライドを付け、積載容量に応じて本体の大きさを変えられる。フタはコンパクトに収まり、開けたままでの移動が可能。

松田技術研究所で開発された製品のなかでも、圧倒的な知名度を誇るのが赤色の郵便集配用キャリーボックスだ。「いっぱい積みたいときにはたくさん積めて、荷物がないときにはそれなりの大きさに。そして雨が降っていないときにはフタがいらないボックス」というのが郵政省からの依頼だった。構想期間はたったの3日間、競合相手は大手企業数社。不利な条件のなかでもアイデアをひねり出し、コンペでは好評を得た。その後、郵便局員のアンケートを取り、採用されると約10万台を納入した。

「ものづくりでのこだわりは、自由な発想でオリジナルのものを考えること。絵を描いたり手を動かしたりして、とにかく一生懸命考えるんだ」

松田氏が描いたスポーツカーのイラスト
取材中、松田氏に書いていただいたスポーツカーのイラスト。ものの1〜2分で仕上げてくれた。絵は独学で子どものころから得意。設計図・帳面もいつも手描き。
CHAPTER 04

JAXAで採用されたオリジナルの防振技術

2008年9月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から声がかかった。「小惑星探査機『はやぶさ』のカプセルがオーストラリアの砂漠に着陸する。このカプセルを安全に日本まで持ち帰りたい」という依頼だった。具体的には、輸送中の振動を1.5G以下に抑えること、オーストラリアからはジープで運び、飛行機で日本まで輸送できることの2点が要求された。それ以外はすべて一任された。

開発・実験に1年以上の月日をかけ、誕生したのがステンレス製の「球状サスペンション」だ。複数の板バネをボール状に組んだデザインにより、上下・前後・左右の全方向へ振動を分散させることができる仕組みである。2010年6月、はやぶさのカプセルは着陸に成功し、球状サスペンションを使ったはやぶさ回収ボックスで、無事に日本までの輸送を果たした。

はやぶさ回収ボックスに採用された球状サスペンション
金属球状サスペンションが採用された、はやぶさ回収ボックス。
CHAPTER 05

安全輸送に不可欠な存在となった球状サスペンション

球状サスペンションを用いた防振構造の使用イメージ
球状サスペンションを用いた防振構造の使用イメージ。

JAXAに採用された球状サスペンションは、軽量で安価、耐久性にも優れていることから、鉄道輸送、精密機器輸送、トラックの防振台など、さまざまな企業からの関心を集め、製品化されてきた。いまや、松田技術研究所の顔ともいえる製品にまで成長した。

ステンレス板ではなくワイヤー状のサスペンションを考案したこともあったが、倍以上のコストがかかってしまう。お客さんがつかない製品では仕方がないとワイヤーは断念した。「球状サスペンションの問題点をあえて挙げるとすれば、これを超えるアイデアが出てこないこと」。それほどまでに、防振性能には自信がある。

「基本的な仕様をゼロから考えて形にしているから、ほかの会社には真似できないオリジナリティがうちの強み。それを採用するかどうかはお客さん次第。売れるか売れないかわからないのが、おもしろいでしょ?」

松田氏のものづくりの精神と球状サスペンションの技術は、いま株式会社MRDへと正式に受け継がれています。技術継承・特許について見る

松田真次の技術と意思を継ぐ、株式会社MRDの防振技術。
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